M・アントニオーニの作品はどれも好きなのですが、
「砂丘」はその中で一番好きです。
 アントニオーニが抱えている虚無感が、 1970年前後のアメリカの空気感と融合し 、
不毛の地 ZABRISKIE POINTで、見事に昇華していると思います。

 アントニオーニの作品には、
本道からいつしか逸れてゆく、気付くと知らない所に来てしまっているような、
逸脱していく快楽を感じます。
 その過程の中で、普段気にも留めないような物、風景が目を奪い、
何かを語りかけてくる。
 現実でありながら、何かがいつもとは違う。
 その違和感に、心地よさを覚えます。

1970年、アメリカ

 70年代に制作された映画、 自然光で撮られたその「ルック」 は、
どの作品も惹かれるものがありますね。
 特に、アメリカ西部、アリゾナの荒野を捉えた風景。
 ZABRISKIE POINT の光景にも圧倒されるのですが、
 やっぱり平地、地平線。起伏はいらない(笑)。
 ただ、どこまでも、延々と続くあの…。

 マークは学生運動に参加している。が、一人集団から離れる。
 目の前で警官が撃たれ倒れる。いつしかその容疑者に。
 マークに緊迫感はない。逃げる気もない。ただ、町にはいられない。
 小型飛行機。操縦できるんだよ、マークは(笑)。
 行く当てもなく飛び立つ。ふらっと。

 ダリアはかわいい(笑)。
 荒涼とした地を切り裂く路上を、一人、車を飛ばす。
 カーステから流れる当時の♪音楽…。
 憧れますね。
 一人、 音楽を聴きながら あんな場所を車で走る。

 二人の出会い。空と地上で戯れ。
 ZABRISKIE POINT 。
 ダリアはかわいい(笑)、リアクションがいい。
 マークのなんてことない一言にも、笑ってくれる。

Love Scene

 ♪Love Scene。
 ジェリー・ガルシアのこの曲が流れるこのシーン。
 このシーンは本当、観ていて「トリップ」しますね。
 それは、 ハッパの作用による陶酔などではなく、
何かノスタルジーに近い幸福感、のような気がします。

 砂、岩、土埃、身体に当たる陽の光。
 このシーンの「ルック」が、僕の中でノスタルジアを喚起させます。
 夏の日? 遠くかすかに 蝉の鳴き声。
 静かに、ゆっくりと過ぎていく時間に、ただ身をゆだねる…。

 ジェリー・ガルシアの弾くギターが、
そんな情景の中に、 連れて行ってくれます。
  幼少時、物心つかぬうちに目にした映像が、
刷り込まれていたのでしょうか?

エンディング

 マークは一人、町に戻る。そして、死んだ。
 さっきまで側にいて、笑い合い、触れ合った人の死を、
ダリアは遠くから、カーステのニュースで知った。
 切ない。

 もう日は沈んだ、辺りは暗い。
 ダリアは微笑んでいる。
 歩き始める。一日は終わった。

 ラストに流れるのが、
ロイ・オービソンの♪ So Young 。
 優しい。ロイの歌声がたまらなく優しい。
 散々だった旅、その一日の終わり。
 ささくれ傷ついた心に、一気に浸み渡り、癒される。
 このカタルシス、「モンド映画」のラストのようだ(笑)。

 いつか、この映画の舞台を旅してみたいですね。
 え? ここで、野垂れ死?
 …いや、悪くないかもね(笑)。