長州力は、猪木と並んで私が熱狂したプロレスラーだ。
 ファンになったのは、もちろん’82年10・8以降である。

 以前は、猪木や坂口のタッグパートナーとして知っていた、その程度。
 シングルで覚えているのは、ローラン・ボックとの試合くらい。
 だが印象に残っているのは、わずか数分、スープレックス一発で長州を倒した、
ボックの凄さだけだ。

 長州が長い間くすぶっていた、つったって、
それは長州だけに限らず、他のレスラーも同じだよ。
 新日本のリングでは、アントニオ猪木だけが輝いていた。
 皆、猪木の試合を観るために、新日を観ていたのだ。

 藤波が、WWF ジュニアのタイトルを獲ったニュースは覚えている。
 NY? マジソン・スクエア・ガーデン? すげえ!と驚いたものだ。
 だが、その後のドラゴン・ブーム、藤波のジュニアヘビーの試合は、
なぜか記憶に残っていない。

 藤波の試合で覚えているのは、ヘビー級転向後の「飛龍十番勝負」、
ホーガンとの一戦だ。この試合、
ホーガンが新たな必殺技アックスボンバーを披露する、と伝えられていた。
 アックスボンバー! ああ?ラリアットやんけ! 
 しかし、ドラゴンはあっけなくマットに沈んだ。
 藤波もまた、トップの外人レスラー相手では、やられ役だったのだ。

’82・10・8 後楽園ホール

 この試合、リアルタイムで観たのか定かではない。
 ただ当時、なんか揉めてんなー、と子供ながらに思ったのは覚えている。
 揉めた当事者が長州だったわけだが、
 そのレスラーが長州だ、って、認識していたのかな?

 まず見た目だよね、あの長髪。
 以前は、 パンチパーマ?の地味な中堅レスラー。
 長州、変わったなー、っていう驚きはない。
 驚くほど、長州というレスラーに興味はなかったから。

 凱旋初戦の選手コール。
 先に呼ばれた長州はリングアナにケチをつける。 
 なんだ、コイツ?  長州を見る藤波の表情が険しい。
 あまりに突然のことに、驚きと戸惑いが…。
 そもそも藤波はこのアングル、知っていたのかな?(笑)

 開始のゴング直前。先に出ろと、またしても長州が文句を!
 藤波を格下扱い? 唐突すぎるだろ!(笑)
 メキシコでUWAのタイトルを獲った?
 いやいや、藤波は現WWFインターのチャンピオン。

 キャリアも実績もドラゴンが遥かに上。
 長州の行動は、理不尽で不自然この上ない。
 事の様子を見つめるブッチャーの背中が、切ない(笑)。

 不穏な空気は、試合が進むにつれ高まっていく。
 タッチを拒否する両者。子供かよ。
 そのリアクション、諍い自体がどこかぎこちない。
 お互い、慣れてないんだな(笑)。
 だがそのぎこちなさが、リアルに揉めているように見える。

 藤波が長州を張り、長州も藤波を張る。試合はそっちのけだ。
 猪木一人が黒い軍団に捕まり、やられている。
 「藤波と長州は減俸ですな」 解説の桜井さんの言葉が厳しい。
 ファンの視線も、試合より二人に…。

 試合が終わった後も、小競り合いは止まない。
 二人が取っ組み合ったまま、番組は終わった。
 結局、何を揉めていたのか、よく分からなかったけど…、
いやー、新鮮だった!

  仲間割れなんて、昔はジェットシンと上田馬之助とかさ、
外人のヒール同士のタッグチームでよくあったけど。
 日本人の、しかも新日本同士の仲間割れなんて!
 それが凄いリアルに、生々しく感じた。

名勝負数え唄 序章

 10・8は終始混乱のまま、長州のファイトはよく分からなかった。
 その後の、10・22広島、11・4蔵前の藤波とのシングル戦。
 この二試合で、完全に長州のファンになった。

 長州のそれまでのファイトスタイルなんて、
蹴り上げるキックと叩きつけるボディスラム。記憶にあるのはそれ位。
 その印象が、大きく変わった。

 10・22、試合半ばで見せたバックドロップ!
 これが、長州というレスラーの存在を、まざまざと見せつけただろう。
 誰もがやるクラシックな技だが、
あんなに高く相手を掲げるバックドロップなんて!
 スピードにのった一連の動き。描かれた放物線が美しい。

 そして、ラリアット!
 当時の日本では、ラリアットはハンセン以外考えられない。
 だが、長州のラリアットに違和感はない。
 溢れる闘争本能を、そのまま相手にぶつける。
 パワーファイターと言われていた長州に、合ってたね。

  そして、11・4で見せたサソリ固め!
 これ、長州の必殺技だったのか!(笑)
 こんな技、見たこともなかったし、何より痛そう。
 極めた時の姿が、実に力強く、サマになっている。

 リキ・ラリアット、ひねりを加えたバックドロップ、
そして、サソリ固め。
 代名詞とも言うべき、長州力の「打投極」が揃った。

  試合後のマイクもねー、盛り上げたわー。
 藤波に、思いのまま言葉をぶつける長州。
 伝わる、その感情が。観ている側も、心が揺さぶられる。

  長州はレスラーとしては小さい。184cm? いや(笑)。
 凱旋帰国といっても、デカい外人レスラー相手ではいずれまた、元のサヤに。
 藤波、186cm? いやいや(笑)。
 WWFインターの防衛を続けるのに、外人レスラー達ではしんどい。
 だったら…

 時を経て、出会うべきタイミングで、
新たに二人は出会ったのだ。

 長州に過去の面影なんてなかった。全くの別人。
 前年、突然マットに現れたタイガーマスクのように 、
 再び新しいレスラーが出現したと、ファンの眼には映った。

 ’82年、二人の対戦ははまだ序章にすぎず。
 「名勝負数え唄」と呼ばれるのは翌年から。
 ’83年、本格的に維新の夜明けが幕を開ける。

  メキシコ行って良かった♡ 髪も伸びたし

 

 

  

 

 

 

 

著者

たねってぃ

1970年生まれ 千葉県在住

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