「シド・アンド・ナンシー」

 ’88年、映画「シド・アンド・ナンシー」を観た時、
シド・ヴィシャスも、セックス・ピストルズも知らなかった。
 実物を知らなかった事が、この映画に入り込めた理由であると思う。

 登場するパンクス。 
 んか、小汚ねえ奴らが、ダラダラフラフラと…。
 物を投げる、壊す。壁に落書きする。所構わずデカい声で騒ぐ、わめく。
 何だ?コイツら。

 ピストルズのライブシーンは断片的。
 あくまでタイトル通り、シドとナンシーの話だ。
 二人のラブ・ストーリー?
 いや、ナンシー役の女がひどすぎるだろ! 演技、ではなく(笑)。
 だから、シドの話、シド・ヴィシャスを描いた映画だ。

 シドはミュージシャン、というよりジャンキー、病人だ。
 禁断症状。冷や汗、震え、関節の痛み…。
 観ているこっちが具合が悪くなる、辛いわ。

 シドを演じたゲーリー・オールドマンが素晴らしかった。
 破滅に向かっていくシドを、全身全霊で体現していた。
 その後、あんな大メジャーな俳優になるとは思ってもいなかったが、
どの作品どんな役でも、シドの姿が重なって見えるぜ!(笑)
 「蜘蛛女」「裏切りのサーカス」、良かったな~。

 劇中、プレイ・フォー・レインというバンド?の、
インストの曲がかかるシーンが、最高にいい。

 船上のライブの騒ぎから、二人が静かに去っていくシーン。
 アメリカの地平線上から、ヘリとツアーバスが向かってくるシーン。
 チェルシーホテルの一室、燃え上がる炎をじっと見つめているシーン。

 ラスト。出所後、雲に覆われたマンハッタンを背に、
ピザ屋に向かって 、廃墟の中を一人歩くシド。
 このカットが凄い。いい画だなー。

 ピザを食い終わって店を出ると、黒人のガキたちが、
ラジカセの曲(♪Get Down Tonight)に合わせて踊っている。
 「カッコつけずに一緒に踊ろうぜ」と絡まれると、
シドはガキたちと一緒に踊り出す!(笑)
 このシーン。たまらなく好きだなー。
 シドが、地獄巡りから救われたようで。

 オーバードース。 シドは21歳、夭折。
 ただのチンピラ? ジャンキー?
 いや、あんな生き様、死に様。それこそパンクだった。

Sex Pistols

  映画を観終わると、すぐに近所のレンタルCD屋に行き、
映画のサントラと、「Never Mind the Bollocks」を借りた。

 私は当時、高三だった。
 受験? ああ、勉強なんてやりたくねー。
 やりたくない、だからやらない。
 先のことなんて、全く考えてなかった。
 まさに「NO FUTURE」(笑)、ったく…。

 ピストルズの曲は、すぐに心を掴んだ。
 アナーキー? クイーン? 知らね。俺、日本人だし。
 何を歌っているかなんてどうでもいい。
 その音! 音だよなー、やっぱ。

  聴いている間は、日常のことなんて頭にない。
 ただその音の中に、自分を預けていた。
 だから、曲が終わると…。だったら、聴き続けるしかない!
 もうずっと聴いていた。繰り返し、何度も。
 6曲目♪「GOD SAVE THE QUEEN」まで完璧、あっという間だった。

 激しいながらも、どこか刹那的な。
 衝動、エナジーに溢れていながら、どこか投げやりな。
 ♪「RIRE」なんて、んか切ない。
 そんな感じが、当時の心境に合った。
 現状の生活に満足していたら、うるせーだけだったかも。

 ピストルズのオリジナルアルバムは、1stのみ、1枚。
 でも、それで良かった。
 それで、伝説になった。

 再結成? 武道館にピストルズ。変な感じだった。
 ああ…、ロットン、まことちゃんかよ。
 もし、シドが生きていたら…。
 客席に向けて、銃をぶっ放すだろ!
 いや、ロットンに向けてか(笑)。

 PUNKSではなかったけど、心の中に秘めたものはね(笑)。
 反体制、なんて大層なものではなく、ただのボンクラ学生。
 いつでもシドの姿や、ピストルズの曲を思い出せば、
気分は軽くなり、体から力が湧いた。それは、現在でも…。