高校に入ると、映画館から次第に足が遠のき、
レンタルしたビデオで映画を観る事が多くなった。

 当時は、「ミニシアターブーム」という時期だった、らしい。
 そのミニシアターで上映されていたのが、俗に「アート系」と呼ばれた作品だった。
 高一の時に観た「ミツバチのささやき」が、私が触れた「アート系」作品の、
初めだったと思う。

 「ミツバチのささやき」を観て以降、私はヨーロッパの作品にも目を向け、
作品の監督に注目して、映画を観るようになった。
 といっても、ミニシアターに行って鑑賞したわけではない。
 深夜に、テレビで観ていたのだ。

ミッドナイトアートシアター

 その後、ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」に出会った。
 この作品は、私に大きな影響を与えた。
 ジャームッシュを通じて、ヴェンダース、ゴダールなどの名前を知った。

 そんな時、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 が、
深夜にTVで放送されることを知った。
 その番組が、フジテレビの「ミッドナイトアートシアター」だった。
 この番組により、私は数多くの作品や映画監督を知った。

 この番組が素晴らしいのは、全編ノーカットであることはもちろん、
間にCMを挟まないところだ。 凄い! これは民放では画期的だった。
 しかも本編の放送前には、劇場用の予告編が流れた。

 先日、押し入れにしまっていた「ロードショー」を引っ張り出し、
「今月のTV映画ロードショー」の記載を基に、
この番組で放送された映画を、順に書き出してみた。
 まぁ、暇だったんで(笑)。

 87・4/17 ストレンジャー・ザン・パラダイス
 番組のオープニングがこの作品だったことが、素晴らしい!

 24 善悪の彼岸 
 5/1 ゴダールのマリア 8 シテール島への船出
 15 未来は女のものである 22 特別な一日 29 カオス・シチリア物語 
 6/5 田舎の日曜日 12 ザ・ローリングストーンズ
 19 コヤニスカッティ 26 ゴダールの探偵
 7/3 エレンディラ 10 昼下がりの衝撃
 17 戦うパンチョビラ 24 ディーバ 31 海を見つめる日

「ディーバ」

  「ディーバ」かなー、強く記憶に残っているのは。
 J・J・ベネックスのデビュー作。ベネックスは当時、カラックスやベッソンと共に、
ネオ・ヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれていた。
 ヌーヴェル・ヴァーグ と聞いて、私はこの作品に飛びついた。

 高校生が惹かれるような要素が、映画の中にたくさんある。
 主人公ジュールの乗るミニバイク、ロフト、ナグラ。音楽に囲まれた日常。
 オペラなんて聴かないけど、あの歌声は、深く心に沁みた。

 リシャール・ボーランジェ!! シッブいわ~。男の魅力満載、たまらん!(笑)
 「災いは災いを呼ぶ」  演じた人物、ゴロディッシュが最高。
 あの部屋も印象的。波の置物、禅、バスタブ!
 この映画はリシャールを見るだけでも充分。もう、主役だろ!

 二人がデートするシーンで流れる曲、サティ風の♪「Sentimental Walk」がすごい良い。
 スリリングな犯罪ドラマととラブ・ストーリーが織り合い、
パリの夜の街が幻想的に描かれる。良かった。

8/7 コヤニスカッティ 14 怪獣島の秘密
 21 海辺のポーリーヌ 28 竜二

 「海辺のポーリーヌ」は、初めて観たロメールの作品。
 当時は、ただ淡々と観ていただけだった。ロメールの映画の面白さ、
素晴らしさに気づくのは、もっと後になってからである。

「竜二」

 「竜二」! んで、この番組で?(笑)
 「竜二」も当時は特に。エロシーンだけ覚えてたな(笑)。

 その後… いやー、最高だよ。竜二役の金子正次が、とにかくいい。
 足を洗ったヤクザの日常。2Kのアパートでのカタギの暮らし。
 おどけた一面を見せながらも、時にギラギラした凄みを放つ。
 焦燥、苛立ち。やるせない表情が、胸を打つ。
 名シーン、名台詞が随所に。

 やっぱり、あのラストだよなー。買い物客で賑わう商店街。
 肩を落として歩く竜二に、列に並ぶ女房子供の姿が目に入る。
 気付いた女房と見合わせた、あの一瞬。あのシーン。
 去り際の竜二が見せた、あの表情! …泣くよ。
 うわー! どうしようもなく切なくなった時、
抜群のタイミングで、ショーケンの♪「ララバイ」が流れ出す!
 いや~、この曲で気分も幾分救われたよ。
 「また全日空に乗れるの?」 あの娘の台詞にもね(笑)。

「ラルジャン」

 9/4 3人でスプリッツア 11 マルチニックの少年
 18 愛の記念に 25 リヴァプールから手紙
 10/2 ジンジャーとフレッド 9 ゴダールのマリア
 16 ノスタルジア 23 ブリキの太鼓 30 ミツバチのささやき
 11/6 マリアの恋人 13 路 20 エル・スール
 27 カオス・シチリア物語
 12/3 未来は女のものである 11 アレクサンダー大王
 18 ラルジャン

 「ラルジャン」を観た時は、ブレッソンなんて当然知らない。
 この作品は、ストーリー展開の面白さに引き込まれて観ていた。
 寂然たるリアリズムの演出は、遺作であるこの作品にも徹底されていた。
 その後、私はブレッソンの映画を求め歩き、そして「抵抗」に出会った。

ルイス・ブニュエル

 ’88・1/8 マリリンとアインシュタイン 
 15 小間使いの日記 22 銀河 29 哀しみのトリスターナ
 2/5 ブルジョワジーの秘かな愉しみ 12 自由への幻想
 19 欲望のあいまいな対象
 26 アナザー・カントリー
 3/4 女優フランシス 11 ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー
 18 ジャンヌ・モローの思春期 25 ベルリンは夜

 ブニュエルの特集、観たよ。ブニュエルは「ぴあ」で紹介されていたので、
名前は知っていた。映画? どれも覚えてない(笑)。
 覚えているのは、映画を観て湧いた奇妙な感覚。

 大体、ビデオに録画して観ていたと思うけど、いずれにしろ観たのは深夜。
 深夜にあんな映画を観て、次の日、学校行ってもさー、
授業なんて頭に入らないだろ(笑)。
 話は分からなくても、日中不意に、映画の余韻が蘇るのだ。