「 マイ・ビューティフル・ランドレット 」

’88・8/4 海辺のポーリーヌ 11 白い町で
 18 真夏の夜のジャズ 25 愛の記念に
 9/1 マーラー 8 ソナチネ
 15 マイ・ビューティフル・ランドレット

 主人公は、パキスタン人青年のオマール。
 ロンドンにパキスタンからの移民が多いなんて、この映画で初めて知った。
 ケン・ローチの映画のように、イギリス国内の様々な問題を提起しながら、
その中で生きる人間たちのドラマが、見事に描かれていた。

 オマールの父親はかつて新聞記者だったが、女房の死を機にアルコールに溺れ、
現在はベッドに寝たきりになっている。
 だがその姿は、自尊心や信念を貫いたゆえの姿だと思える。
 息子の将来を案ずる気持ちは、誰よりも強い。

 オマールの親友のジョニー役、ダニエル・デイ・ルイス! 
 失業、貧困の中で生きるチンピラを熱演していた。
 その存在感は、言うまでもなく際立っていた。

 同性愛のシーンは衝撃的だった。数あるモチーフのうちの一つとして、
自然にサラっと描くからさー。当時は大いに驚き、戸惑った。

 叔父ナセルとレイチェルのシーンもいい。 ナセルにとってレイチェルは、
愛人というより、唯一心が安まる大切な女性なのだ。
 それは成功や金だけでは得られない、かけがえのない存在だった。

 オマールの父親が、新装開店したランドリーを訪ねて来る。このシーンが素晴らしい。
 幼少時に世話をしたジョニーは、成長すると極右として移民排斥を叫んだ。
 だが、オマールの父親はジョニーを責めはしない。静かに優しく、諭すだけだ。
 許すことの尊さを、ジョニーに暗に示したのだ。

 この映画は、様々な形の愛情に溢れている。
 最も胸を打ったのは、オマールの父親と弟ナセルの兄弟愛だ。

 商売人として成功したナセルは、落ちぶれた兄を軽蔑していた。
 だがレイチェルを失い、疲れ果てたナセルが真っ先に向かった場所は、兄の許だった。
 オマールの父親は、何のわだかまりもなく、傷ついた弟を優しく迎えた。

 かつて自分を蔑み、攻撃した相手でも、弱っている時には助けの手を差し出す。
 難しい。たやすくできることではない。
 オマールの父親は、大切なことをいくつも教えてくれた。
 その限りなく優しい眼差しで。

ジャン・ギャバン

22 エミリーの未来 29 チケット
10/13 眺めのいい部屋
20 霧の波止場 27 われら巴里っ子
11/3 現金に手を出すな

10 女の一生 17 禁じられた遊び 24 居酒屋
12/1 サクリファイス 8 特別な一日
15 グレイフォックス 23 ハメット

 ジャン・ギャバンは、私が好きな俳優の5本の指に入る。
 私の父もギャバンのファンで、出演した映画をよく語ってくれた。
 ギャバンの映画を観ると、ギャバンのカッコ良さにシビれ、
そして父のことを思い出す。

「父/パードレ・パドローネ 」

’89・2/2 プレンティ
 9 父/パードレ・パドローネ 16 サン・ロレンツォの夜
 23 グッドモーニング・バビロン

 タヴィアーニ! 衝撃的だったなー、どの作品も。
 ネオリアリズモの流れを汲みながら、フェリーニとは違う形で、
物語を神話にまで昇華させていく。

  特に「父/パードレ・パドローネ 」。
 イタリアの田舎、貧困の暮らし。
 風や草の音、土や家畜の匂いがする世界で描かれる、
青年の成長と父の葛藤の物語。素晴らしかった。

ゴダール

 3/16 ミュリエル 23 マリリンとアインシュタイン
 30 マリアの恋人
 4/6 ハンガー 20 バウンティフルへの旅
 27 あなたがいたら・少女リンダ
 5/4 勝手にしやがれ 11 気狂いピエロ(ピエロ・ル・フ)
 18 男性・女性 25 パッション
 6/1 カルメンという名の女 8 ゴダールの探

 ゴダールだ! 初期vs’80年代の作品。やっぱ初期、60年代の作品がいいよ。
 「パッション」とか… 覚えてねえなあ。

「 ホテル・ニューハンプシャー 」

 15 スワンの恋 22 追想のオリアナ
 29 ルー・サロメ/善悪の彼岸
 7/6 ワーグナーとコジマ 13 ラ・パロマ
 27 マリアの恋人
 10/12 ホテル・ニューハンプシャー

 「 ホテル・ニューハンプシャー 」は、 J・アービング原作の家族の物語。
 従来のアメリカ映画の雰囲気と違い、控え目な品の良さを感じる。
 イギリス人である監督のT・リチャードソンと撮影のD・ワトキンの手腕だ。
 オッフェンバックの♪「ホフマンの舟歌」も素晴らしい。

 長女役のジョディ・フォスター! この映画のジョディが一番好きかも。
 永遠に憧れる隣のお姉さん。もう、たまらん(笑)。

  ロブ・ロウ演じるジョンが姉フラニーを想う気持ち、痛いほどわかるぜ!
 まあ、ジョディ・フォスターだからな(笑)。
 でも本当、同じ気持ちで観てたよ。ったく、M・モディーンのヤロー。

  「開いた窓は見過ごせ」 この作品は、数多くの教訓が出てくる。
 相次ぐ悲劇や災難に見舞われながら、家族たちはそれを乗り越え生きていく。
 登場人物たちも皆、魅力に溢れていた。
 熊の着ぐるみに入ったN・キンスキー! ああ、助けになりたい!(笑)

  父親役のボー・ブリッジスも、良かった。
 悲しみに直面した時でも取り乱すことなく、
いつでも毅然と家族たちを励し、支えていた。
「盲人にも 夜明けは美しい」 あのシーン、心に残るなー。

  「人生は夢の中で作られて行く でも夢ははかなく 逃げ去ってしまう
  それでも何とか 生き続けるしかないのだ」
 このセリフは、その後の人生でも消えることなく、私の中で生き続けた。

 先日、何十年かぶりにこの映画を観たが、全く色褪せることなく、
私に多くを語りかけてきた。
 ♪「ホフマンの舟歌」 が流れるラストシーン。私は声をあげて泣いた。

 「人生はおとぎ話よ」 リリーはぐんぐんぐんぐん大きくなる!
 ホテルの庭では、お祖父ちゃんも、ママも、エッグも、ソローも駆け回っている!
 フロイトも、バイクに跨った“メイン州”も!!
 皆の姿は、幸福だったあの頃のまま。
 記憶や思い出の中だけではない。みんな、ここにいるのだ!

 人生はシリアスでハードワーク。
 開いた窓を見過ごせない時も、あるよ。 
 そんな時は、この映画を観ればいいのだ。

       Life Is A Fairy Tale

19 モーリス 26 眺めのいい部屋
 11/2 熱砂の日 9 カルテット 16 田舎の日曜日 
 23 ミツバチのささやき 30 オテロ
 …以上、1989年12月号の記載まで

 リストを読んで気付いた。毎週欠かさず観ていたと思っていたのに、
全然観てなかったじゃねーか!(笑) 観たのを忘れた?
 あるいは何の印象にも残らない、面白くない作品だったのか。

 他の局でも、深夜に観ていたしね。
 タルコフスキーの「惑星ソラリス」「ストーカー」。
 J・ギャバンとベルモンドが共演した「冬の猿」。
 良かったなー。 素晴らしい体験だった。

 深夜にテレビで観た、数々の映画たち。
 画面に映し出される、日常とは全くかけ離れた世界、ドラマ。
 どの作品も、人間が生きることの素晴らしさを、伝えていたように思う。

 高校時代、十代にこうした映画と出会えたことは、とても貴重だった。
 自分が知らぬ世界の存在を発見し、知ることは、
当時の私にとって喜びであり、救いでもあった。

 まぁ、そのおかげで、学校では夢の中だったけど…(笑)。