The Stooges

「Fun House」

 高校を卒業し、パンク・ロックばかり聴いていた私に、
当時毎日のようにつるんでいた地元の友人が、一枚のCDを聴かせてくれた。
 ストゥージズの2nd「Fun House」だった。

 ストゥージズの名前は、その時なんとなく知っていた。
 リリースを見ると、1970年。古い。私の生まれた年だ。
 この時代にパンク? 疑心暗鬼になりながら、そのCDを聴いた。

 1曲目♪「Down on the Street」
 曲が始まる。お!悪くない。
 タイトなドラム。 暗闇の密室で鳴り響くような。

 イギー・ポップが歌い始める。静かに、淡々と。
 次の瞬間、イギーのシャウトと共に、一気に曲がうねり始める!
 激しくドロドロと、妖しく流れ出す。
 あ、パンクだ、これ。すぐに、私の心は掴まれた。

 2曲目♪「 Loose 」 曲のテンポが上がる。
 胸ぐらをつかまれ、上から下へ下から上へと、激しく揺さぶられる。
 閃光が瞬き、浮かび上がった金属の雨粒が肌を突き刺す。
 カッコいいなー。

 3曲目♪「 T.V. Eye 」
 イギーのヴォーカルが、さらに激しく煽り立てる!
 頭をコンクリートの壁に、何度も叩きつけられる。
 血だまりを踏み、飛び散った血を再び体に浴びる。

 ストゥージスを聴いて思ったのは、今までは気にならなかった
ドラムとベースの音だ。よく耳に届く。

 タイトなドラムが曲を引き締め、
重く沈んだベース・ラインが、底でうねり続ける。
 産み出された、そのグルーヴ感が凄い!
 延々と繰り返されるうち、体内はその毒で侵されていく。
 ギターのノイズが、優しく神経に傷を負わせる。

 5曲目♪「 1970 」! ああ、たまらん。一番好きだ。
 あのドラムから、ベースが絡まり、加速していくところ。
 このベースのリフがカッコいいなー。

 「1 feel alright」のシャウト、イギーも最高だ。
 このサビのところ、痺れるなー。
 曲の半ば、サックスが加わり、フリージャズのように混沌さを増す。
 ベースのリフだけで何十分、何時間も聴いていられる。
 中毒性が、半端じゃない!

 泡立つ高温のコールタールの沼に、ズブズブと沈んでいく。
 もがけばもがくほど、熱で爛れた皮や肉は剥がれ落ちていく。

 雑誌「STUDIO VOICE」の特集「不良」「狂気のアメリカ」の中で、
ストゥージス時代のイギーのパフォーマンスが書かれている。
 「ステージに散乱したガラスの破片の上を裸で転げまわり」
 「熱いワックスを体に塗りたくったり、カミソリで我が身を切り裂く等々」
 ストゥージズの曲を言葉で説明しようとすると、そんな感じだよ。
 イギーはまさに、体現してたんだ。

 2ndばっかり聴いてたけど、1st「The Stooges」もいい。
 一曲一曲、実験性に溢れている。 いろいろ探ってたんかな?

 1曲目♪「 1969 」 おお、いい。これで方向性、決まったろ。
 2ndのテイスト。正攻法だ。
 2曲目♪「I Wanna Be Your Dog」
 このゆっくりと絶望へ落されていく感じ。たまらん。
 犬になりたいと卑下しながら、髪を掴み、殴る蹴る。
 4曲目♪「No Fun」 ピストルズもカバーしていた。
 このらしいテンポが、いいんだよなー。

 正直、3rdからはあんまり。
 イギー・ポップのソロもまた、然り。
 う~ん、「Fun House」の毒に、染まりすぎたか。

Iggy Pop

 いまだに現役なのが、凄い!
 つーか、見た目。全然変わってない! すげえ!
 もちろん、ライヴのパフォーマンスも。

 今、手許にあるのは「Lust For Life 」。
  やっぱり映画「トレインスポッティング」のイメージ。
♪「Lust For Life」はテーマ曲として、あの物語にぴったりだった。

 20年ぶりの続編「T2 トレインスポッティング 」。
 ユアン・マクレガーが部屋でレコードをかけるラストシーン。
 聞えてきた ♪「Lust For Life」 に、泣けたよ。

 そーいえば坂本龍一のアルバム「NEO GEO」で、♪「RISKY」を歌ってた。
 それがイギーを聴いた、初めてかも(笑)。
 本当いい声だよなー。深みがってさー、艶があってセクシー。

「SOMEWHERE IN CALIFORNIA」

 ジャームッシュの映画「コーヒー&シガレッツ」の中の一編。
 なんと、トム・ウェイツと共演!! 大爆笑だよ。面白いなー。

 2人の会話は、店で会った当初からかみ合わない。
 「イギーと呼んでくれ」
 「遅れてすまない ジム」

 この二人。先輩後輩とか、どっちがどうか分からんけど、
そのビミョーな関係性が、そのまま映画に現れていて、面白い。

 「いまだに吸ってる奴らが 哀れでしょうがないよ」
 禁煙の話で、ようやく意気投合できたと思いきや、
 「タバコをやめてよかったよ やめただろ? だから堂々と吸える」

 「1本どうだ?」 吸い始めたトムが、イギーに勧める。
 「そうだな やめたんだから 遠慮なく吸おう」
 イギーも吸い始める。

 飄々とすっとぼけるトム・ウェイツに、戸惑うイギーのリアクション。
 最高だよ。笑った。生きていけるわー。

 ジャームッシュは、ストゥージズのドキュメンタリー映画「ギミー・デンジャー」
も制作している。
 ジャームッシュ、イギー大好きだったんだな(笑)。

ガレージ・ロック

 つーのに、ストゥージズはジャンル分けされている。
 ガレージ、っていう言葉の響きが最高。
 Wikiに挙がってるバンド、そんなに聴いてない。

 MC5「Kick Out The Jams」 う~ん、ハード・ロックだ。
 演奏は凄い! カッコいいけど…。ヴォーカルがなー(笑)。
 高い声が苦手。高音で歌い上げる、絶叫するのが。
 後に動画も観たけど…。前歯欠けてるやんけ!(笑)
 やっぱカッコよくないと、ね? いや、大事だろ。

 The Sonics 悪くない。カッコいい。
 悪くないけど、古臭く感じんな。アマチュアっぽい、つーか。
 でもギザギザしてるよね。当時の時代を思えば、凄い。

 ’60年代半ば。 ビートルズの影響? 皆、ガレージでバンドを始めたんだ。
 だから数も多い。曲は良くても、ヴォーカルのスター性のなさが、致命的だ。

 ストゥージズは、ガレージよりもっと暗闇。
 一切外の光が遮断された、廃墟の地下の密室。
 イギーが歌えば、闇は新たな形を成し躍動する。
 その闇に毒された者たちが、次々と音楽を始めた。

 やっぱイギーは唯一無二、スペシャルな存在なのだ。

 

 

著者

たねってぃ

1970年生まれ 千葉県在住

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