’79年、というより昭和54年、公開。
 小学生だった私は、テレビ放映を毎回食い入るようにして観ていた。
 私にとってこの映画は、「ゾンビ」同様、小学生時代に観た映画のイコンだ。

 小坊の時期だけに限らず、その後もテレビで放映があれば欠かさず観た。
 ビデオに録画してからは、少なくとも年に1回は必ず観ていた。
 DVD、Blu-rayを購入した現在でもそうだ。
 この映画の何が、そんなにも私を魅了したのか。

 少年期は、戦国の軍勢と自衛隊の戦闘シーンに、心躍らせていただろう。
 その後、平成、令和と時代は変わり、齢を重ねた私は気付いた。
 この作品が私を惹きつけてやまないもの。
 それは、千葉真一、夏八木勲を始めとする、俳優たちの溢れる魅力だ。

伊庭義明と長尾景虎

 やっぱり千葉真一だろ! 千葉真一なくして、この映画は成り立たない。
 カッコいいよな~。男らしくて、シブくてさー。
 時折見せる笑顔が、たまらなく優しい。
 この時、40前か。野郎の魅力、全開だよ。

 ワンカットワンカット、全て画になる。サマになる。
 何気ない台詞、一言が、いつまでも心に響く。
 アクションは言うまでもなし!
 世界に誇る日本のアクションスターと言っていい。すげー。

 サニー千葉として海外でも有名だが、「戦国自衛隊」は知られているのかな?
 間違いなく千葉真一の、いや、日本映画の代表の一本だぞ!

 夏八木勲は、映画やテレビドラマでその姿を見るたび、
あ、景虎だ、と思ってしまう(笑)。

 ヤクザ役など悪役も多いが、やはり、正義感に満ちた正統な役が似合う 。
 この映画の景虎役は、異色だったんじゃないのかな?
 だが景虎は、もはや夏八木勲しか、考えられない。

 「同族じゃ」 会った瞬間から、二人は惹かれる。
 お互いに、自分に似たものをすぐに感じたのだ。
 戦国と昭和。400年の隔たりなど関係なく、通ずるものは通ずるのだ。

 空を飛ぶ鉄の船、地を走る鉄の箱。
 当初は、天下獲りのために自軍につける目論見だったかもしれない。
 だが景虎は伊庭を知るにつれ、伊庭という一人の男に惚れたのだ。

 この男と共に戦い、そして天下を獲る。純粋な思いだ。
 景虎に触発された伊庭も、自分の中に眠っていた本心に目覚め始める。
 2人は大志を共有し、戦いの中で、堅く結ばれていった。

渡瀬恒彦(矢野)

 渡瀬恒彦、よかったなー。
 凄い。もの凄い存在感だ。下手したら、主役の二人も食っちまう。
 アンチ・ヒーロー。もう一人の、影の主役だ。

 どの作品、どんな脇役でも、画面に現れただけで、空気を一変させる。
 どんなに相手が大物でも、飲み込んじまう。
 文太や渥美清、あの寅をもね。

 伊庭への信頼が強かったこそ、裏切られたと感じた反発も大きかった。
 秘めていた反逆心は抑えられず、戦国の地で暴走した。

 「自分の生き方 自分なりにケリをつけなきゃいけないんですよ」

 生き急ぐ。いや、死に急いでいる。
 自らケリをつけるために。死に場所を求めて。
 求める相手は、伊庭しかいなかった。

 矢野と伊庭は、戦うことでしか分かりあえなかった。
 矢野もまた、伊庭と同族だった。
 だからこそ、伊庭はあんなにも悼んだのだ。

 ♪「 サン・ゴーズ・ダウン サン・ゴーズ・ダウン もう日が暮れるから 」
 ケリはついた。伊庭に見届けられ、矢野は戦国の海に散った。

 「これからは 俺の本心のままに生きる」
 矢野の魂を受け継ぐように、伊庭はそうつぶやいた。

もうなくすものはない

 菊池。にしきのあきらがさー、良かったなー。
 訓練の後、恋人と駆け落ちの約束を交わしていた。
 その恋人が、岡田奈々!
 この可愛さ! それこそ時空を超えてるだろ!(笑)

 永遠に来ることない恋人を、約束の場所で待ち続ける。
 …切なすぎる。

DREAMER

 ♪「I am a dreamer You are a dreamer, too
What’s goin’on ? How long can this world last this way」

 「These dreams are my deepest hopes
So now, I dream on I am a dreamer」

 ♪「I’m a believer You’re a believer, too」

 「It could take a lifetime But how small is a life time to pay
  I am a dreamer」

信玄

 この映画の、最大の見せ場。武田信玄との川中島の合戦。

 「うわ~ いるなあー」 隊員の一人がつぶやく。
 自衛隊員11名。対する信玄の軍勢、二万!!
 つーと一人当たり… え? 二千人! いや、無理無理!

 もー、絶対ヤだ。多すぎるって!
 あんなの前にしたら、イモ引いてとっとと逃げるわ。
 一人村に残ったかまやつひろしは正解。大正解だったのだ(笑)。

 「撃て! 昭和に戻れるんだ!」
 相手は死など恐れてはいない。
 倒せど倒せど次から次に現れ、波のように幾重にも押し寄せてくる。
 ゾンビより、タチが悪い(笑)。

 「放棄しろ! 放棄!」
 信玄の策略にはまり、ジープから、武器を積んだトラックまで失う。
 観ていて、ジリジリハラハラ。あー心臓が痛い。

 装甲車が穴に落ちた! 身動きできない。
 四方八方から、勢いづいた敵が怒涛の如く迫ってくる!
 もー、最悪だよ。

「真田鉄砲隊、放てー!」 火縄銃が一斉に火を噴く!
 ああ、絶望感。
 その時、ヘリが上空から軍勢を一掃する。「助かったあ~」
 だが、唯一の希望であったそのヘリも…。

 この映画の中で、最も凄惨な死に方。
 マラソンランナーの隊員森下。
 このシーン。ずーっとトラウマだったわ(笑)。

 漫画「男組」の中で、影の総理が神竜に言う。
 「銃殺は一番苦しくない死に方だそうな」
 おそらくそうかもしれない。
 少なくとも、刀や槍で、斬られたり刺されたりするよりはな!

 「弾が、ない!」「もう燃料がないよ!」
 一人、また一人と、隊員たちは戦国の地に散っていく。
 「和子ー!」 菊池の絶叫が、胸を締め付ける。

 「本陣を探せ 信玄の首を獲るんだ」 
 戦況を打破するには、その道しか残されてない。
 伊庭。さすがだったなー。

 「手出し無用!」 信玄もさすがだ。
 信玄の鬼気迫る剛力に、伊庭は追い詰められる。
 だが歴史はまだ、伊庭に味方をした。

妙蓮寺

 失ったものは、あまりに大きかった。
 伊庭たちは、這々の体で朽ちた寺にたどり着く。

 生き残った隊員たちは、元の場所に戻ろうと言う。
 「ぬるま湯につかった平和な時代に戻って 何になる?」
 戦いに憑かれた伊庭は、独り孤立する。

 「俺はあの時代が好きです あの平和な時代が大好きです!」
 隊員平井が言ったこの台詞。
 全編の中で、何気に一番心に沁みたかも。

 実は伊庭も、昭和の時代に戻りたかったかもしれない。
 しかし伊庭にとってそれは、天下を獲ること。
 歴史はそれを、許さない。

 景虎が寺に現れた。待ちわびていた伊庭は笑顔で駆け寄る。
 だがその表情を見て、足を止めた。
 伊庭は一瞬で景虎の胸の内を知った。 

 「手を出すな お前たちには関係のない事だ」
 銃を構える隊員たちを制する。

 伊庭は景虎に対し、怒りや憎しみなど微塵もなかった。
 むしろ、感謝の思いさえ抱いていた。
 本来の自分を、気付かせてくれたことに対して。

 景虎は天を恨み、仰ぐしかなかった。

 「景虎 わしは天下を獲る」
 それは景虎へ向けた、伊庭の愛を込めた言葉であった。
 そして、別れを告げる、最期の言葉でもあった。

 覚悟はとうにできていた。
 すべてを受け入れた伊庭の表情は清々しく、神々しくもあった。

 義明を討つなら自らの手で。景虎は思った。
 討ち取られるなら景虎の手で。伊庭もまた思った。
 2人の思いは最期まで同じだった 。

 乾いた銃声が鳴り響いた。歴史は、変わることを恐れた。

ララバイ・オブ・ユー

 ♪「生きることは 愛することと 覚えていて欲しいのさ」
 ジョー山中の歌声が心を震わせる。

 戦いを愛し、戦う事しか知らなかった景虎が、初めて戦いを憎んだ。

 ♪「ララバイ・オブ・ユー」が流れる間、
私は画面の中の景虎と、まったく同じ思いだった。
 まさに断腸の思い。身を引き裂かれるような。
 伊庭と景虎は、一心同体であった。

 「人はみんな孤独(ひとり)なのだと それを知って欲しいのさ」

歴史は俺たちに

 あのラストシーン。齢とるごとに、ズシンとくる。
 ♪挿入歌。どの曲もみんな最高だったなー。
 んで、こんなに泣かせる?
 ああ、戦国時代から帰って来られない(笑)。

 「戦国自衛隊」の予告編もいい。
 「無敵武田騎馬隊に挑む 若き自衛隊員21名」
 あの♪テーマ曲がさー、もう刷り込まれている。
 聴くたびに、強烈なノスタルジーに襲われる。

 ♪「サン・ゴーズ・ダウン もう日が暮れるから」
 「サン・ゴーズ・ダウン  家へお帰りよ」
 帰る家があるのって、何より幸せなことだよ。

 「歴史は俺たちに なにをさせようとしているのか?」

 歴史とは、戦国時代? いや、昭和だ。
 昭和にしか、存在し得なかった男たちの顔。
 昭和という時代を生きた男たちを、
未来永劫伝えていくために、この映画はあるのだ。

 角川映画「復活の日」の中で、なんと!
 ワンカットに、千葉真一と夏八木勲と渡瀬恒彦の3人の姿が!!
 凄い! 「南極自衛隊」だよ(笑)

 ああ、「戦国自衛隊」。一度、映画館で観たかった!!