ハードコア・パンク

  高校を卒業すると、地元の中学時代の友人とよくつるんでいた。
 その友人から聴かされたのが、ハードコア・パンクだった。

 当時は浪人中。まだ十代。体力もまだあった!(笑)。
 とにかく毎日、フラストレーション、鬱憤がたまっていく。
 それとシンクロするように、聴く音楽のスピードも速くなっていった。

 とにかく速ければいい! 
 そんな誤った?方向に、私たちの音楽嗜好は向かった。

 友人は高校時代、よくハードコアのライブに行っていた。
 地元千葉のライブハウス。安全靴、履いて(笑)。
 「喧嘩しに行くようなもんだ」
 彼は腕っぷしも強い。中学の時から、武闘派だったから(笑)。

 GASTUNKのレコード、友達、持ってたなー。
 ライブで配られたカセットテープとか。
 おそらく当時のライブに、インディーズ時代のXも出ていたはず。

 聴いたバンドは他に、ディスチャージ、カオスUK、などなど…。
 その中で、現在、唯一私の手許に残っているCDが、G.B.H、だ。

G.B.H

 G.B.H カッコいいよなー。
 やっぱり他のバンドより、曲が良かったのかな?
 そして、速い! 速い、たまらん!

 ♪「No Survivors」! 一番好きな曲だ!
 イントロのギター。あれ、なんか爽やかだぞ…と、思うや否や
一気に加速、疾走し始める!! もー、頭も体も勝手に、止まらない!

 もしも自分がプロレスラーだったら、入場曲は絶対これだろ、
なんて思っていたある時、何気に観たプロレス中継で。
 え? あれ? んだ? 幻聴か?
 まさかの♪「No Survivors」が! マジか、誰だよ!と思って見たら。
 えー、何でコイツなんだよ~。

 後年、YouTubeで、初めて動く G.B.Hを観た。
 動画はもちろん♪「No Survivors」 。
 うおー! 条件反射で全身、揺すってたね。揺する、つーか、暴れる。
 繰り返し何度も観てヘトヘト…。
 でも観るとまた、やっぱね。体は動き出す。

ナパーム・デス

  速ければいい、そんな思いに捉われていた頃、
友人が、また一枚のCDを私の目の前に差し出した。
 「ナパーム・デス」

 CDケース裏返したら、ん? 一枚のアルバムに、50曲くらいある!
 ディスクをセットする友人は、どこか半笑いのような。
 曲が、ん?始まった? んか、ミシミシいってるぞ?

 わー! 速えー!! 確かに、これはハードコア以上!
 速い! とてつもなく。 ヴォーカル? ただ叫んでるだけだ!

 驚きと興奮が…と、その余韻に浸る間もなく、
次の曲が始まった! あーん? 同じだ!(笑)
 曲のスピードも速いが、曲が終わるのも速い。
 次、その次もまた。延々と、同じような曲が絶え間なく続いていく。

 やがて、聴いた当初の感動?は消え失せ、重苦しい疲労感だけが。
 聴いて楽しむ音楽じゃない(笑)。
 でもまぁ、とにかく、友人と顔を見合わせて、笑うしかない。
 何度聴いても(聴かないけど)、曲の見分けがつかない。
 それでも、その中で、1秒と3秒くらい?で終わる曲、見つけた(笑)。

 う~ん、速ければいい、ってもんでもないな、なんて
反省にも似た思いが芽生え始めた時、またしても友人が新たなCDを。
 「SORE THROAT」だ。

 ソア・スロート? あ、のどが痛いか。浪人中の私はとっさに訳した。
 ん? のどが痛い? …嫌な予感がした。
 ジャケを見た。!! お~、1枚に100曲くらいあるよ~。

 速えー!さらに! だったと、思うよ(笑)。曲なんて、覚えてるわけがない。
 あー、もういいかな。
 CDが終わった時、何か開放感が(笑)。
 穏やかな徒労感とともに、目の前が晴れていくような気がした。

 その後も、友人はまたいくつか…。考えたネタを披露するように。
 「Painkiller」 お、サックスが入ってる。変化を加えた。
 やっぱり演ってる方も、飽きるんだな(笑)。
 「Naked City」 お、日本人が参加している。
 んかもう「実験音楽」つーか、「ノイズ」の匂いが…。

 気付かぬうちに、ピークは過ぎていたのだ。

  とにかく速さだけを求めていた私と友人は、
ある日、友人が持っていたドラムマシンを使い、実験?を行った。
 30年前なので、マシンはiPadくらいの小さなやつだ。

 まず、1拍に打ち込める時間を最大限に伸ばす。
 そして、その1拍の間に、できる限り多く音を打ち込む! 
 ひたすら速く、パッドを連打、連打(笑)。
 それを、ギュッと最短に縮め、1小節の中に最大数、並べる。

 で、いよいよ、その音を再生してみると…。
 ツーーーー。 つながっちゃったよ(笑)。
 つながった、ように聴こえるのか。
 ああ、そうだよね、そうなるのか。

 ツーーーという音が、部屋に鳴り響く。
 ふと気付いた。あ、これ、心電図の音だ。
 波形が水平を描き、患者が臨終を迎えた時の…。
 まさに、デス! じゃねえか!

 そうか、これで終わったんだ。我々のスピードへの探求は。
 それを告げる音だったのか。

 と同時に、何かから解放を知らせる、救いの音だったのだ。