中学から高校まで、聴いていた音楽は当時のヒット曲だった。
 デヴィッド・ボウイは、♪「Blue Jean」と映画「戦場のメリークリスマス」で知った。
 それ以前のボウイは、知らなかった。

 高三の時に、SEX PISTOLSを知り、PUNKを聴くようになった。
 ピストルズやクラッシュ、ラモーンズ、そしてストゥージズ。
 そのバンドが影響を受けたバンド、さらにそのバンドが、という具合。
 つまり、時代を遡り始めたのだ。

 同時に、その頃にヒットしていた曲はほとんど聴かなくなった。
 それもまた、自然な流れだった。

 高校を卒業した後、地元の中学の友人が一冊の本を私に見せた。
 渋谷陽一が書いた「ロック ベスト・アルバム・セレクション」だ。

ロック ベスト・アルバム・セレクション

 当時はインターネットなどないので、過去のミュージシャンの情報は乏しい。
 私と友人はこの本を読んで、音楽史に残る「名盤」というものを知り、
数々の偉大なミュージシャンを知った。
 音楽のルーツを辿る足掛かりとして、この本は大変役に立った。
 私はこの本の中から、聴きたい音楽を探し、見つけた。

 当時、CDの値段は三千円以上。高い!
 地元のレコード店には、聴きたいCDなど置いていなかった。
 つーことで、渋谷まで輸入盤を買いに行くことにしたのだ。

 初めてTOWER RECORDに行った日。
 春というより初夏。汗ばむ陽気が、心地良かったなー。
 CDは、縦長の紙のケースに入って並んでいた。
 値段は1600円くらい? 日本盤の半額だ。
 クラッシュの1st。テレヴィジョン。トム・ウェイツの「Rain Dogs」。
 ヴェルヴェットの1stも、そうだな。その時は確か、5,6枚、買った。

 どんな音楽だろう? と、CDをセットし、
その曲が始まる瞬間のワクワクドキドキ感が、たまらない。
 聴いた後の、新しい世界を知った喜びも。

 TOWERには金が貯まると行き、10枚くらいまとめて買った。

 中古のレコード店にもよく行った。
 「レコード・マップ」という本を手に、店をハシゴして回った。
 聴くことはもちろんだが、探すこともまた、楽しかった。

 私と友人はその頃、パンク・ロックを中心に聴いていたが、
パンク以外の音楽を聴き始めると、次第に求める音楽が異なり始めた。
 友人がギターを弾き始めたのが、最大の理由だ。
 実際に楽器を演奏する者と、ただ聴いている者とで、嗜好が分かれ始めたのだ。

 ギター? そりゃあ、弾けたらいいけどさー。
 諦めが早い、俺(笑)。指が、痛い…。

’60年代、’70年代

 友人はまず、ジミ・ヘンドリックスに夢中になった。
 ジミヘン中心に世界が回っている感じだ。
 ヤードバーズ、クリーム。
 フリー、ブルー・チアー、テン・イヤーズ・アフター。
 マウンテン。もちろん、ツェツペリンも。
 フランク・ザッパ、マザーズ・オブ・インヴェンション。
 キャプテン・ビーフハート、リトル・フィートも友人は聴いていた。

 私が夢中になったのは、ドアーズだった。
 オルガンの音が、新鮮だった。
 そして、なんつってもジム・モリソン。その歌声、その存在感。

 ステージ上で歌う姿。後年の堕ちていく様にも、惹かれた。
 27歳。なぜかその歳で死ぬミュージシャンが多い。
 当時は自分も27歳で… なんて漠然と思っていた(笑)。

 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド。
 初めは馴染めなかったけど、繰り返して聴くうちに、どっぷりハマった。
 一曲、一曲、ものすごい世界観がある。
 ヴェルヴェットを聴き、当然のように、ルー・リードを聴いた。

 バーズ、グレイトフル・デッド。
 クロスビー、スティルス&ナッシュ。そしてボブ・ディラン。
 サイモン&ガーファンクルや、カーペンターズもよく聴いた。
 優しさに飢え、弱っていたのかも(笑)。
 きっと速い音にも疲れ、日和っていたのだ。

 ピンク・フロイドもよく聴いた。
 「原子心母」「狂気」「炎」「おせっかい」。邦題のタイトルもいい。
 そしてどのアルバムも、ジャケットが素晴らしい。

 エマーソン・レイク&パーマーの1stもよく聴いた。
 ♪「Lucky Man」が大好きだった。
 プログレ、つっても、フォーク的な、つーかね。

 プロレスラーの入場曲も、シビれる選曲が多い。
 P・フロイド♪「吹けよ風、呼べよ嵐」 ブッチャー。
 L・ツェッペリン♪「移民の歌」 ブロディ!
 B・サバス♪「アイアンマン」 ロード・ウォリアーズだ!!(笑)

 雑誌「STUDIO VOICE」の音楽の記事も、よく参考にした。
 クラフトワーク、スーサイド、ディーヴォ。
 ジョイ・ディヴィジョン。
 ディス・ヒートも聴いた。でも、売っちゃったー(笑)。

 紹介記事を読むと、曲のイメージが掻き立てられ、期待が高まる。
 聴きたい衝動を抑えられず、買う。そして聴く。
 抱いていたイメージと音のギャップに、呆然とする。
 期待は失望へ、そして怒りへと変わる(笑)。

 怒りの矛先を向ける相手は、そのミュージシャンか、記事を書いたヤツか、
それとも、自分自身なのか?(笑)
 いや、誰も悪くない。好みが、違うだけなのだ。

 買って失敗したCDなんて、山ほどある。
 やっぱり音楽は聴いてみないと、分からない(笑)。

 聴いてダメなものは、中古レコード屋に叩き売った。
 だが不思議な事に、しばらくすると気になり出し、もう一度聴きたくなる。
 で、また買う(笑)。
 PILの「The Flowers of Romance」とか、そうだった。
 売り買い。不毛だったなー。

 今の時代。聴きたい曲は、YouTubeですぐにチェックできる。
 なんていい時代なんだ!(笑) 本当、幸せだよ。

 やがて、私は友人と袂を分かつ時が来た。
 友人は、ブルース、そして、ジャズを聴き始めたのだ。

 う~ん。私の好みに合わせ、あれやこれやと聴かせてくれたのだが…。
 私がブルースやジャズを聴くことは、残念だが、なかった。

映画

 高校の終わり頃から、パンク以外で私が一番聴いていたのは、トム・ウェイツだった。
 トムを知ったのは、ジム・ジャームッシュの映画「ダウン・バイ・ロー」だ。
 当時の私の中で、トムの音楽はジャームッシュの映画と同じく、しっくりきた。
 私の人生を、その時決定づけたのだ(笑)。

 私は映画を観て、多くの曲、多くのミュージシャンを知った。
 もちろん、映画のサントラも数多く聴いた。
 好きな映画は、音楽も最高なのだ。

 そもそも、パンクを聴き始めたのも、
「シド・アンド・ナンシー」を観たのが、発端だったっけ。

 D・リンチの「ブルー・ベルベット」で、ロイ・オービソンを知った。
 ♪「In Dreams」 あのシーン、たまらないなー。
 ♪「Crying」 「ガンモ」のラスト、最高だよ。
 「リトル・ヴォイス」では、♪「It’s Over」をマイケル・ケインが歌った。
 笑ったなー! 腹痛い。最高だった。

 「ボーイズ・オン・ザ・サイド」は、観た記憶がないのだが、
W・ゴールドバーグが口ずさむように歌う、あのシーンだけは覚えていた。
 その歌が、ロイの♪「You got it」だと後に知った。
 あらためてあのシーンを観て、号泣した。

 現在あるCDの中で、一番新しいバンド? レディオ・ヘッド、だ。
 そこで、時代は止まっている(笑)。
 トニー・レオンが出演した「シクロ」で、♪「Creep」が使われている。
 あのシーン、ずっと印象に残っていた。

 「ファイト・クラブ」のラスト。♪「Where Is My Mind?」
 かつてないような全身鳥肌。シビれたなー。
 ピクシーズも、その後ハマった。

 ボブ・ディランの曲も、映画の中でハッとすることが多い。
 「ビッグ・リボウスキ」では♪「The Man In Me」
 「ヴィンセントが教えてくれたこと」では、♪「Shelter from the Storm」
 私は映画の後、すぐにその曲が収録されたディランのアルバムを買い、聴いた。

 そして、三十代半ば。
 エルヴィスに目覚めたのも、「THIS IS ELVIS」を観たからだった。

 新たな曲を発見する源は、いつでも映画だった。
 それは、現在でも変わらない。

 私は「名盤」という呪縛から解放され、
その時耳にしていいと思った音楽を、自由に聴くようになった。
 まぁ、その時の気分だ(笑)。