当日の蔵前の様子を、真樹日佐夫はこう語っている。
「あのとき、会場には警備員が100人もいたよ。金属探知機も用意されていた。
 それに引っ掛かって帰れなくなった奴もいたよ。
 あの時は何人も留置場に入ったんだ。」

 各々が喧嘩装束に身を固め、一部の者は懐に道具を隠し持った。
 皆、やる気だったのである(笑)。

 はやる気を抑えられずに血をたぎらせ、
臨戦態勢でファンたちは、試合開始を待っていた。
 殺伐とした異様な空気が、館内に充満していた。

8・27蔵前

 ウィリーが入場して来た。
 なんとグレイシー・トレインならぬ、極真トレインだ!
 凄い。この一戦に賭ける、ウィリー陣営の並々ならぬ気合が感じられる。

 猪木の入場。脇を固めるのは、藤波と長州だ!
 坂口でもなく、藤原喜明でもない。
 この両者というのが、何とも感慨深い。

 両選手、両陣営、関係者一同がリング上に集まった。
 ついにこの時を迎えた。決着を着ける時が来たのだ。

 国歌吹奏。♪The Star-Spangled Bannerが流れる。
 ウィリーの、何かを思い詰めたような表情が印象的だ。
 胸中に去来するものは、何だったのだろうか。

 猪木の表情は硬い。
 ウィリーに目を合わせることなく、終始うつむき加減だ。
 セコンドの長州は、どこか自然体で、いい表情をしていた(笑)。

 ウィリーがコールされた。
 両腕を高く突き上げ、ファンの歓声に応え華麗に回って見せた。
 そして鋭い視線で、その先の猪木を見据えた。

 短く編まれたドレッドがいい。
 鍛え上げられた褐色の上半身は美しく、真っ白の空手着が映える。
 両手にはめられた真っ赤なグローブが、やがて訪れる血生臭い瞬間を想起させる。
 ウィリー。いや~、カッコいいなー。画になる。最強だ。

 ここで事件が起きた。
 ナーバスな猪木はなにやらウィリーにクレームをつける。
 代理の新間がウィリーに近づくと、大山茂が新間を突き飛ばした!
 するとすかさず藤波が、新間を守るように、大山茂の前に立ちはだかった。
 そして、大山茂の肩を押したのだ!

 大山茂は藤波が触れた自分の肩を見、藤波を睨んだ。
 この流れ。完全に喧嘩が始まる前の瞬間だよ(笑)。

 すげえぞドラゴン!(笑)
 あの大山茂に一歩も臆せず、対峙するとは!

 リング上を緊張が走った。
 一触即発の不穏な空気が立ち始めた。その時!

 猪木が吠えた!
 館内に大歓声が巻き起こる。 
 ついに、世紀の一戦のゴングが鳴った!

1R

 ウィリーがまず、牽制で左ジャブを出す。来い、と猪木を誘う。
 猪木がジャンプして蹴りを出すが、ウィリーは軽くいなす。

 ウィリーが、右後ろ回し蹴り! 続いて、左の横蹴り!
 館内が息を呑んだ。
 空気を切り裂く、その音が聞こえてくるようだ。

 ウィリーのロー! 軽いが猪木は飛び上がる。
 これ、本気だったら… 立てないかも。

 ジリジリとした膠着が続く。
 一方が詰め寄れば、一方が引く。距離は縮まらない。
 ウィリーの左ジャブをかいくぐり、猪木が組みついた!
 館内大歓声。この試合始まって一番の盛り上がりだ。

 お互い、来い来いと相手を挑発する。
 ウィリーの左ジャブに合わせ、猪木が右のローキック!
 ウィリーも負けじと右のローを返す。

 ウィリーがパンチで前に出る。猪木はガードを固め亀の状態に。
 だがウィリーはラッシュせず、自ら猪木から離れる。
 猪木は来いとウィリーを煽ると、スライディングキック。
 猪木アリ状態になったところで、1Rが終了した。

2R

 ウィリーは右上段から左回し蹴りのコンビネーション!
 唸りを上げる凄まじいウィリーの蹴り。
 一辺6メートルのリングの端から端まで、届くような迫力だ(笑)。

 コーナーで猪木は、ウィリーに来いと誘う。
 だがウィリーはこれにのらない。冷静だ。

 ウィリーが上体を揺すってパンチを出し始めた。
 再び右から左回し蹴りのコンビネーション。
 ロープへ追い詰めた猪木に右ひざ!

 スタンドでもつれた状態から、猪木の頭突き! ウィリーも返す!
 館内が、異常にヒートアップしてきた。

 猪木は調子が出てきたのだろうか?
 なんと掛け声一閃、浴びせ蹴り! まったく明後日の方向だ(笑)。
 無防備の猪木に、ウィリーの蹴りがモロに入る!

 本来なら、これでジ・エンドだ。
 あまりの好機に、ウィリーも面食らったのだろうか?(笑)

 組みついて左、右と膝の連打! 猪木はグランドに引き込む。
 両者はエプロンでもつれ、リング下へ落ちた。

両者リングアウト

 一斉に両陣営が駆け寄る。両者を囲んで輪ができた。
 ウィリーはマウント状態で、猪木を殴り続ける!

 ゴングが打ち鳴らされた。大山茂がウィリーを猪木から引き離す。
 猪木はうずくまったまま、動かない。

 倒れていた猪木が立ち上がった。額からは鮮血が流れている。
 ウィリーに向かって、怒りの形相で詰め寄る。

 エキサイトするウィリーを止めているのは、大山泰彦だ!
 というか、押し寄せる極真関係者を、必死に止めているのだ(笑)。
 んと、大変だよ。ご苦労様です。

 添野義二が、新日側に向かって叫んでいる。
 新日で矢面に立つのは、星野勘太郎と、ドン荒川だ(笑)。

 両陣営、押すな押すなで揺れている。
 リングに向け、物が一斉に投げ込まれる。
 館内は怒号、罵声が飛び交い、騒然としている。
 混乱の極みだ。

 鳴り続けるゴングの音は、何を告げているのだろうか?